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10月14日、水曜日、午前7時── 。
こうして俺は、主人の小山と仲間達に別れを告げ、一足早く北罚Ц咝∥荬颏ⅳ趣摔筏郡韦坤盲俊
第2章 二人の「耍麤g俊英」
前罚Ц咴坤群詻gカ搿。ㄆ匠19年10月10日 著者撮影)
北罚Ц咝∥荬颏ⅳ趣摔筏堪长蓼毫ⅳ良膜盲郡韦虾詻g小屋である。
涸沢カ毪摔隙帳紊叫∥荬ⅳ搿R卉帳膝‘ルの真ん中、「池の平(たいら)」と呼ばれる地に建つ涸沢ヒュッテ。もう一軒は北罚Ц咴滥狭辘沃毕隆侗冥思膜晏恚à剑─Δ瑜Δ私à暮詻g小屋だ。この内、涸沢小屋に10月9日、耍麤gは泊まっている。
北罚Ц咝∥荬钎啸ぅ趣颏筏皮い块v係で涸沢小屋のスタッフとは顔見知りだ。俺は、当日の宿帳を見せて欲しい旨(むね)告げると、涸沢小屋名物のソフトクリ啶松喙模à筏郡膜扭撸─虼颏沥胜椤ⅴ讴‘ジを繰(く)った。
10月9日の宿泊者の中に耍麤g俊英の名を見つけ出すのは、さほど難しい事では無かった。まあ、これは既に確認されている事なので当然と言えば当然なのだが、俺が知りたいのは別の点だ。俺は胸ポケットからオリンパスμ795SWを取り出した。耐寒温度…10度、多少の落下衝撃にも耐えるこのタフなコンパクトデジカメはアウトドアには持ってこいである。俺は耍麤g自身が書いたその部分を数枚撮影し、涸沢小屋をあとにした。
次に向かったのは上高地バスタ撺圣毪坞Oにあるインフォメ伐绁螗互螗咯‘である。ここには登山者が出した登山届が集められている。
俺は10月9日に出された登山届の内、耍麤gのものを見せてくれるよう頼んだ。普通なら、アポ無し、ましてや警察関係者でも何でも無い俺あたりが頼んだ所で門前払いを食らうがオチだが、北罚Ц咝∥荬沃魅恕⑿∩饯瑱C転を利かして、俺が小屋を出た直後に話をつけておいてくれたらしい。待つ事五分。耍麤gが出した登山届が俺の目の前に差し出された。
「摺Γ
俺は北罚Ц咝∥荬颏ⅳ趣摔工腚H、小屋の宿帳に書き残されていた耍麤gの筆跡をデジカメに収めて来ていた。涸沢小屋に残されていた耍麤gの筆跡は北罚Ц咝∥荬韦猡韦热浮<姡à蓼─欷猡胜溉碎gが書き残したものだ。しかし、今、俺の目の前にある登山届の筆跡は二つの小屋に残されていたものと摺ΑN⒚瞍怂皮皮悉い毪e人が無理して筆跡を真似(まね)て書いたように見える。
「なんで、登山届と小屋の筆跡が摺Δ螭溃俊·坤趣工毪取⒌巧浇欷刃∥荬瞬肖丹欷抗P跡、どちらが耍麤g本人のものなんだ?」
俺は早速、北罚Ц咝∥荬涡∩饯卧丐入娫挙蛉毪欷俊
「もしもし、小山さん? 漢波羅です」
「ああ、漢波羅君。今どこ?」
「上高地インフォメ伐绁螗互螗咯‘です。それより大変な事が分かりました」
「何? 大変な事って?」
「筆跡ですよ」
「筆跡?」
「登山届と小屋に残されていた耍麤gさんの筆跡が摺Δ螭扦工琛
「エッ?」
「北罚Ц咝∥荬群詻g小屋の宿帳に残されていた筆跡は同じだったんです。だから、10月9日、涸沢小屋に泊まった人間と、翌10日、北罚Ц咝∥荬瞬搐蓼盲咳碎gは同一人物なんです。でも、登山届に残されていた筆跡は微妙に摺Δ螭扦工琛
「それってどう言う事?」
「考えられる事は二つ。一つは耍麤gさん本人が登山届を書いて上高地インフォメ伐绁螗互螗咯‘に提出したものの、小屋に泊まったのは別人。もう一つは誰かが耍麤gさんの名前で登山届を出したものの、小屋に泊まったのは本人。どちらが真実にしろ、疑念が深まった事だけは確かです。やはり、耍麤gさんの死には何かありますよ」
「で、漢波羅君。これからどうするんだい?」
「とりあえず、耍麤gさんの勤めていた会社を訪ねて、耍麤gさん本人が書き残したものを見せてもらおうと思っています。そうすれば、登山届と小屋の筆跡のどちらが耍麤gさん本人のものなのかがはっきりしますから。それと、ついでに誰か同僚をつかまえて、耍麤gさんの事を聞いてきます」
「分かった。でも、漢波羅君、くれぐれも無理しないでくれよ」
「分かっていますって」
10月15日、木曜日、午後3時40分── 。
俺は六本木ヒルズ森タワ衰榨%工驑嫟à霂诟婊嵘纭弗泰‘ベルバ啊工蛟Lねた。ヌ佶毳些‘グはネット事業を中心に展開し、この不況下にも関わらず業績は堅眨⑸鐔Tの平均年齢も比較的若く、活気が漲(みなぎ)っている。
受付の女性に来社の用件を伝えると、間もなくヌ佶毳些‘グの女性社員が現れた。彼女の案内で会議室へと通され、待つ事五分。俺と、さして年齢が変わらないであろう男が入ってきた。ス膜紊悉椁趣涎预ā⒁姢克⒔钊猡胃钉饯激丹饯Δ馈:韦攻荸‘ツでもしているのだろうか?
「お待たせ致しました。企画第一課の係長をしております深山明夫(みやま…あきお)と申します」
「初めまして。漢波羅響資(かんばら…きょうすけ)と申します。お忙しい中、時間を取らせてしまい、すみません」
俺は名刺を深山(みやま)に手渡した。
「漢波羅響資さん???ですか。名刺に社名や肩書きが何も書かれておりませんが、失礼ですが、お仕事は何をされておられるのですか?」
「ああ、それがその???フリ楗螗工扦筏疲浚浚俊
「と申しますと、フリ楗ぅ咯‘やフリ幞楗蕙螭妊预盲郡耸陇颏丹欷皮椁欷朐Uですか?」
「まあ、そんな所です」
「ところで、今日はどのようなご用件で? 受付の者からは耍麤gの事で訪ねて来られたとしか聞いておりませんので」
この深山と言う男、何とはなしに警戒してるように感じるのだが、何故だろう? 俺は、深山の伲鼏枻摔洗黏à骸⒛妞速|問を返した。
「失礼ですが、深山さんは亡くなられた耍麤gさんとはどのような関係だったのですか?」
「耍麤gは私の所属する企画第一課の課長でした。私は係長ですから、耍麤gとは上司と部下の関係でした」
「深山さんは耍麤gさんと仕事以外でお付き合い等、されていましたか?」
「いいえ。でも、何故そのような事をお聞きになるんですか?」
「いえ、直属の上司と部下でしたら、例えば仕事帰りに一杯飲んでいくとか、休日、一緒にゴルフへ出かけるとか、そう言った事は無かったのかなぁと思ったまでの事です」
「いいえ、そう言う事は一切ありませんでした。あくまでも仕事のみの付き合いでした」
深山の言葉は機械的と言うか事務的で冷たさを感じる。どうやら、耍麤gの事を良く思っていなかったようだ。
「ところで、深山さん。今日、お訪ねしたのは耍麤gさんが生前書き残した書類、メモでもなんでも良いのですが、何か拝見出来ないかと思いまして」
「耍麤gが書き残したもの?」
「ええ、耍麤gさんの筆跡を拝見したいんです」
「それは一体どう言う意味ですか?」
「実は気になる事がありまして???耍麤gさんが10月9日、上高地インフォメ伐绁螗互螗咯‘に出した登山届と、同じ9日に泊まった涸沢小屋の宿帳、10日に泊まった北罚Ц咝∥荬嗡迬い喂P跡が摺Δ螭扦工琛
「???」
「ですから、登山届と二軒の小屋に残された筆跡のどちらが、耍麤gさん本人が書いたものなのかを確認したいのです」
「しかし、耍麤gの死は滑落事故だった訳でしょう? 警察からはそのように聞いていますが。第一、今更(いまさら)、あなたに耍麤gの書き残した書類を見せなくてはならない理由が分からない。何の権限があって警察の捜査のような事をしておられるのですか?」
深山は冷静を装ってはいるが明らかに神経伲ē施‘バス)になっている。耍麤gの事で詮索されたくないと言った感じだ。
「確かに私には捜査権限なんてありません。でも、眨伽氡匾ⅳ毪螭扦工琛
「それはどのような理由ですか?」
「僕は耍麤gさんが泊まった北罚Ц咝∥荬螐緲I員でして」
「それがどう関係しているのですか?」
「宿帳に偽名を書くのがいけない事だと言う事は深山さんもお分かりですよね」
「まあ、それはそうでしょうね」
「ましてや、泊まった客が翌日亡くなった訳ですから、当然、警察が小屋へも来たんですよ」
「???」
「で、宿帳を確認した所、耍麤gさんが泊まった事は確かだった。でも、筆跡が摺Α
「???」
「となると、小屋に泊まったのが本当に耍麤gさん本人であったのかを確認する必要があるんですよ」
「???」
「もし、小屋に泊まったのが筆跡確認の結果、耍麤gさん本人で無かったとしたら、僕達はその事を警察へ報告しなくてはなりません。何しろ、偽名による宿泊だった事になりますからね」
「でも、そうだとしても何故、一従業員のあなたが訪ねて来られたのですか? 第一、小屋の責任者からは何の連絡もありませんでしたし、アポイントメントも無しに、いきなり来社されるとは???」
「事前にアポイントメントを取っておかなかった事は素直(すなお)に謝(あやま)ります。でも、小屋の主人は会社で言えば社長です。社長本人が直々(じきじき)にアポイントメントを普通取るでしょうか?」
「まあ、いいでしょう。ご用件は分かりました。今、耍麤gが書いた書類を持ってきますから、少々お待ち下さい」
漸(ようや)く深山は折れてオフィスへと書類を取りに戻った。それにしても、深山と言う男、どうも耍麤gについて何かを隠している気がしてならない。そうでなければ、たかだか筆跡確認一つで、ここまで渋ったりはしないだろう。
10分後、深山は書類を片手に戻って来た。
「お待たせしました。これが耍麤gの書いた書類です」
「ありがとうございます。それでは、失礼して拝見します」
俺は深山が持ってきた書類、登山届、そして、二軒の山小屋に残された筆跡を注意深く較(くら)べてみた。
「お持ち頂いた書類と登山届の筆跡は同一ですね」
「はあ」
深山は気の無い返事を返してきた。
「つまり、上高地インフォメ伐绁螗互螗咯‘に出された登山届は、耍麤gさん本人によって書かれたものだった事になりますね。しかし、そうなると二軒の山小屋の筆跡が摺Δ韦虾喂胜扦筏绀Δ停俊
「全く別人の筆跡なのですか?」
「微妙に似てはいます。でも、素人(しろうと)考えですが、耍麤gさん本人の筆跡を無理して真似たように思えるんですよ」
「しかし、山小屋と言うと高い所にある訳ですよね。空気が薄くなって体眨摔鈮浠Fれるんじゃありませんか? それで、筆跡にも変化が現れたとか???」
「いえ、そんな事はありません」
「???」
「これが8000メ去毪虺à毳ē佶欹攻趣雾斏悉胜椁い吨椁骸⒎'高連峰はせいぜい3000メ去爰墹扦埂S喑蹋à瑜郅桑⑻逭{を崩さない限り、他人から見ても明らかに分かる程の筆跡の変化は生じません。それに耍麤gさんは涸沢小屋で既に筆跡に変化が現れています。もし、涸沢小屋で体眨藟浠袱皮い郡韦胜椤ⅳ饯欷瑜旮烁撙け狈'高小屋へは登ってこないでしょう」
「そうですか」
これ以上、問答を続けると墓穴を掘ると見たのか、深山は口を噤(つぐ)んだ。
「これで、小屋に泊まったのが耍麤gさん本人で無かった事がはっきりしました」
「???」
「この事は一応、後日、警察にも報告しておきます」
「???」
「それでは、失礼致します。お忙しい中、貴重な時間をお割(さ)き頂き、ありがとうございました」
「いえ、とんでもありません。お役に立てて良かった???」
深山は再度、力の無い返事を返し、オフィスへと帰っていった。
これで、はっきりした事がある。それは、登山届を出した耍麤gと、二軒の小屋に泊まった「耍麤g」。二人の耍麤gがいたと言う事だ。そして、耍麤gと同じ職場で働く深山の存在。彼は何かを隠している。その何かは、まだ分からないが、どうも、他人には詮索されたく無いと言った風だ。
第3章 耍麤gと深山明夫
俺は会議室をあとにエレベ咯‘へと向かった。すると、先程、俺を会議室へと案内してくれた女性社員と再会した。
「さっきはどうも」
「あ、いえ。とんでもありません」
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彼女は深山とは摺で殼韦胜ば︻啢蚍丹筏皮俊0长悉工丹盒卦蚊潜伺蚊挨虼_認する。
「あ、そうだ。木村未来(みき)さん???て言うんですね」
「はい」
「木村さんも深山さんや亡くなられた耍麤gさんと同じ企画第一課の方ですか?」
「ええ、そうです」
「それなら話が早い。今日、仕事の後、何かご予定はありますか?」
「エッ?」
流石(さすが)に初対面の男にいきなりアフタ斡瓒à蚵劋欷欷小⒄lしも警戒モ嗓摔胜毪韦系比护馈1伺悉沥绀盲壬恧蝰担à工─幛俊
「いや、実は亡くなられた耍麤gさんの事でお話を伺いたいなぁと思いましてね。勿論、ディナ悉搐辘蓼工椤
暫(しば)し思案していた彼女は、おもむろに笑顔で答えた。
「いいですよ。見た所、危険そうには見えないし???ただし、ラ幞螭衰绌‘ザなんて言うのは嫌ですからね」
俺は彼女の仕事が終わるまで、六本木ヒルズ内の毛利公園で時間を潰(つぶ)す事にした。それにしても、六本木ヒルズ森タワ趣虾韦趣猊啸撙ぁ5厣54階。これこそ正に摩天楼と言った建物だ。標高3000メ去毪伪狈'高小屋で働いていた俺ですら、流石にこの人工構造物には度肝(どぎも)を抜かれる。
「そう言えば、昔、天に届く程、空高く聳(そびえ)えるバベルの塔を人間が造った話が拢龝顺訾皮郡胜
俺はクリスチャンでは無いものの、ミッション系私立幼稚園の出身なので、多少なりとも拢龝藢潳工胫Rはある。バベルの塔の話やら、神に滅ぼされたソドムとゴモラの町の話を思い出していると、空を仰ぐ俺の顔に覆(おお)い被(かぶ)さるように彼女の顔が不意に現れた。
「お待たせしました」
「ああ、ビックリした。